見出し画像

川下り

孤独は不思議だ。一人でいる時よりも、人に囲まれている時、人と関わらなければならない時の方がずっと強くそれを感じる事がある。孤独から逃れたい時、わたしは一人の時間が欲しくなる。矛盾するようだけど、一人の時間が欲しい時は、人通りの多い街の中を歩くと少し気持ちが楽になる。

小さな船に乗って川下りをするみたいな感覚で、人の流れに乗ったり逆らったり、スマホを眺めながらフラフラとこちらにぶつかってきそうな人をよけ続けたりする。そうしているうちに少しずつ気持ちが楽になってくる。少なくともここにいる人たちは、今この瞬間わたしのことを怖がったりしない。無闇に神聖化したりしないし、幻滅されることもない。わたしは透明人間のように街の中にとけこむことができる。


誰かを変えようとしたり、自分の思う通りに動いて欲しいと願い始めたりするとき、人間関係のバランスは狂い始めるのだと思う。そう思ってしまったり、そう思われたりすることが続くと、次第に心が擦り減ってくる。わたしたちはそれぞれ別の人格をもったひとりひとりの人間で、完全に理解し合えることはないし、ひとつになることもない。わたしたちは所有物ではなく、ゲームを有利に進めるための駒でもなく、感情を持った、喜怒哀楽をちゃんと持った人間だ。




仕事が終わってふと、日が落ちるのがすいぶん早くなっていることに気づき、エレベーターに乗る前に外の景色をなんとなく眺めた。まだ六時前なのに外は暗く、スカイツリーや都庁、東京タワーなどに煌々と灯りがともっている。夜景は人の体に似ていると思う。ビルの間と間に伸びる道路は血管、行き交う車や電車・人は血液、赤血球、白血球。ゆっくりと流れていく街の様子を眺めるのが好きだ。街は生き物だと思う。


雨が降っていましたか?と同僚に質問されたので、まだ大丈夫なようですよ、と返事をした。それから2、3軽く世間話や冗談を言い合ったりしたあと、エレベーターに乗って下へ行き、お別れを言ってわたしと同僚はそれぞれの帰るべき場所に向かい、人ごみにまぎれた。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

20

進月

悲しい気持ちの時は、二進数や円周率を眺めると気持ちが和らぐ中年女性

その他エッセイなど

つらつらと思ったことや感じたことを文章や写真に。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。